撹拌脱泡機 特集メディア:撹拌脱泡Journal

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遠心力のG値とは?

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撹拌や脱泡の条件を設定する際、「何rpmで回すか」という回転数に注目するケースは少なくありません。しかし、同じ回転数であっても、回転半径が異なれば材料に作用する加速度は変わります。そのため、装置の大きさが変わるラボから量産へのスケールアップなどでは、rpmだけを基準に条件を合わせても、同じ処理結果を再現できるとは限りません。

そこで知っておきたいのが「G値」です。G値は、回転によって生じる加速度が地球上の重力加速度の何倍に相当するかを示す値で、回転半径と回転数から計算できます。本記事では、G値の基本的な考え方や計算方法、rpmとの違いを整理したうえで、撹拌・脱泡条件を検討するときにどのように活用すればよいのかを解説します。

G値とは?回転数(rpm)との違い

G値とは、回転運動によって発生する加速度を、地球上の重力加速度を基準として表した値です。「100G」であれば、標準重力加速度のおよそ100倍に相当する加速度が作用していることを意味します。遠心機などでは「RCF(Relative Centrifugal Force:相対遠心力)」として「×g」で表されることもあります。

ここで注意したいのが、回転数とG値は同じものではないという点です。rpmは「1分間に何回転するか」を表す回転速度の単位であり、回転によって実際にどの程度の加速度が生じるかまでは示していません。

同じrpmでも回転半径によってG値は変わる

回転によって生じるG値は、回転数だけでなく回転半径によって変化します。たとえば同じ1,000rpmで運転していても、回転中心から材料までの距離が50mmの装置と100mmの装置では、材料に作用する遠心加速度は同じではありません。

このため、小型の試験機から大型の量産機へ移行する場合に、「試験機で1,000rpmだったから量産機でも1,000rpm」と設定するだけでは、材料が受ける物理的な条件まで同じになっているとは限らないのです。装置サイズが異なる条件を比較するときには、rpmだけでなくG値にも目を向ける必要があります。

G値の計算方法|回転半径と回転数から求める

回転運動によるG値は、回転半径と回転数から求めることができます。回転半径をmm、回転数をrpmで表す場合、一般的には次の式で計算します。

G = 1.118 × 10-6 × 回転半径(mm) × 回転数(rpm)2

この式から分かる重要なポイントは、G値は回転半径に比例し、回転数の2乗に比例するということです。回転半径が2倍になればG値も2倍になりますが、回転数が2倍になるとG値は約4倍になります。

実際にG値を計算してみる

たとえば、回転半径が100mm、回転数が1,000rpmだった場合を考えてみましょう。計算式に当てはめると、「1.118 × 10-6 × 100 × 1,0002」となり、G値は約111.8Gです。

同じ回転半径100mmのまま、回転数だけを2,000rpmにすると、G値は約447.2Gになります。回転数そのものは2倍ですが、G値は約4倍です。このように、rpmを少し変更しただけでも材料に作用する加速度は大きく変化する場合があります

「回転数を少し上げただけなのに、材料の状態が大きく変わった」という現象が起きた場合には、rpmの差だけでなく、それによってG値がどの程度変化したのかを確認することが重要です。

なぜ撹拌条件をrpmだけで判断してはいけないのか

撹拌条件をrpmだけで管理すると、同じ装置を使い続ける場合には比較しやすくても、装置サイズや構造が変わったときに条件を正確に比較しにくくなります。特にラボ設備から量産設備へのスケールアップでは、回転半径が変わるため、同じrpmを設定しても材料に作用する遠心加速度が変化します。

公転自転式の撹拌脱泡機では、容器を公転させることで材料に遠心力を与えながら、自転によって材料内部に渦流や上下方向の流れを生じさせます。そのため、公転によってどの程度の加速度が作用しているかを把握することは、異なる装置や処理条件を比較するときの一つの手掛かりになります。

たとえばラボ機と量産機で同じ材料を処理するとき、rpmだけを見るのではなく、それぞれの回転半径からG値を求めて比較すれば、「材料にどの程度の遠心加速度を与えているか」という共通の視点で条件を整理できます。

G値だけを合わせれば同じ撹拌結果になるわけではない

一方で、G値を合わせれば必ず同じ撹拌品質になるわけではありません。ここは特に注意が必要です。G値から分かるのは主に回転運動によって生じる加速度であり、実際の撹拌・分散・脱泡の状態は、それ以外の条件にも左右されます。

公転自転式の撹拌脱泡機であれば、公転と自転の回転比率、材料の粘度や比重、容器形状、材料の投入量、処理時間、温度なども仕上がりを左右します。公転によって遠心力を与えるだけでなく、自転による渦流や上下対流が組み合わさることで撹拌が進むためです。

したがってG値は、「この数値なら必ずきれいに混ざる」という絶対的な基準ではありません。rpmだけで条件を記録するよりも、異なる装置や条件を比較しやすくするための物理的な指標の一つとして活用するのが適切です。

材料の粘度や密度とG値の関係

G値の計算式そのものに、材料の粘度や密度は含まれていません。G値は基本的に回転半径と回転数によって決まります。しかし、同じG値を与えた場合でも、材料特性が違えば実際の流動や分散、脱泡の状態は異なります

高粘度材料では流動状態にも注意する

高粘度の樹脂やペーストなどは流動しにくく、低粘度材料と同じ条件を設定しても十分な対流が起きない場合があります。そのため、単純にG値を高くするだけでなく、自転による流動やせん断とのバランスを考えることが重要です。

必要以上に回転数を高めれば、G値は大きくなりますが、同時に材料へ与える負荷や摩擦による発熱も増える可能性があります。熱に弱い材料では、混ざりやすさだけを基準に回転速度を上げるのではなく、処理後の温度や材料の変質の有無まで確認しながら条件を決める必要があります。

比重差のある材料では分散状態を確認する

樹脂と高比重のフィラーなど、比重が大きく異なる材料を扱う場合も、G値だけで撹拌状態を判断することはできません。強い遠心加速度が作用する環境では、材料の密度差によって移動の仕方が異なるため、分散状態や偏りについても確認する必要があります。

公転による遠心力と自転による流動をどのように組み合わせるかによって結果が変わるため、材料に適した条件を探る際は、G値とともに公転・自転比率や処理時間などを記録しておくと、条件を比較しやすくなります。

スケールアップではG値を条件比較の指標にする

G値を理解するメリットが特に大きいのが、ラボから量産へのスケールアップです。小容量の試験機で良好な結果が得られたとしても、大容量機では容器の移動する軌道や回転半径が異なる場合があります。

そこで、試験条件を単純に「1,000rpm・3分」のように記録するだけではなく、回転半径から算出したG値、公転・自転の条件、処理時間、材料温度、処理量、処理後の状態までセットで記録しておくことが重要です。

量産機へ移行するときには、ラボ機とまったく同じrpmにすることを目的とするのではなく、まずG値の違いを確認したうえで、自転条件や処理時間などを調整していきます。この考え方を取り入れることで、装置のサイズが変わった際にも、なぜ結果が変化したのかを検証しやすくなります。

ただし、装置の構造や材料特性まで含めた完全な相似条件をG値だけで作ることはできません。最終的には実際の材料を使ったテストを行い、撹拌状態、分散性、脱泡状態、温度などを確認しながら最適条件を決定することが大切です。

まとめ

撹拌条件を検討するとき、回転数(rpm)は分かりやすい指標ですが、rpmだけでは材料にどの程度の加速度が作用しているのかまでは分かりません。G値は回転半径と回転数から計算でき、装置サイズや回転条件が異なる場合でも、材料に作用する遠心加速度を比較するための指標として活用できます。

特に回転数はG値に対して2乗で影響するため、わずかなrpmの変更でもG値が大きく変化する場合があります。ただし、実際の撹拌品質はG値だけで決まるものではありません。材料の粘度や密度、公転・自転比率、処理量、時間、温度なども含めて条件を検討することが重要です。

ラボから量産へのスケールアップや、異なる撹拌脱泡機の条件を比較するときは、「何rpmで回したか」だけではなく、「どの程度のG値で、どのような条件を与えたか」という視点でデータを蓄積していきましょう。

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